子供を甘やかさず,かわいがる

「甘やかす」と「かわいがる」の違いとは?

子供をかわいがるのは良いことで,子供を甘やかすのは悪いことだという漠然とした共通の認識があるように思います.では,「かわいがる」と「甘やかす」の違いは何でしょうか.

松井るり子さんは,著書「幸せな子ども―可愛がるほどいい子になる育て方」の中で次のように書いています.

かわいがりと甘やかしの境界も子供によって異なる.それをマニュアル化するのは無理で,答えは子供の中にあると考えて,じっくり子供を観察することから始めたら良い.どうしても難しければ,とにかく100%子供の願いを聞いて,共感を込めてオウム返しすることからスタートしても,多分罰は当たらない.

子供が夕方「もっと遊びたい!」とごねたとき,「ホント,遊びたいねー」とつくづく困った顔で溜息をつく.演技ではなく,本当に子供に共感する.子供は案外聡くそのあたりを読み取って許してくれる.

子供への共感の大切さは,色々な方が色々なところで主張されています.子供にとって,自分は受け入れてもらっているという安心感,信頼感を持てることが大切なわけです.もっと自信を持って,子供をかわいがってあげても良いのではないでしょうか.松井るり子さんは,次のようにも書いています.

子供に優しくすればつけあがるなんてことはない.あなたは大切な人に優しくされてつけあがるだろうか.親を無条件に心から大切に思ってくれる子供に対して,「優しくすればつけあがる」なんていう世俗的な心配を忍び込ませてはいけない.

甘やかし過多は確かに怖い.しかし,かわいがり不足の方がもっと怖い可能性もある.

過保護と過干渉

子供に優しくしていると,祖父母や第三者から,「そんなに甘やかしてばかりいると,とんでもない子になっちゃうわよ!」みたいな有言無言のプレッシャーがかかるようです.世間一般の人達は,どうして子供をかわいがることに恐怖するのでしょうか.

松井るり子さんは,著書「七歳までは夢の中―親だからできる幼児期のシュタイナー教育」の中で次のように書かれています.

一般に,「優しくする=過保護=ろくな子にならない」,「突き放す=鍛える=強い子になる」という図式がちらついて,我々母親は過保護恐怖症に陥りやすい.心を鬼にして子供のために目標を設定し,子供が合理的にそこに到達できるように気を配る.言いつけを聞かせることに夢中になると,子供に冷たい監視の目を注いだり,侮辱的な言葉で泣かせたりしてしまう.

我々が恐れる過保護の内容を検討してみると,過干渉であることが多い.確かに大人が干渉しすぎると,子供が自分で生きようとする力が奪われる.しかし,保護については,過剰よりも不足を心配した方がいい.これは学生時代に籍を置いた児童学科で学んだ.そこの基本コンセプトは「かわいがればかわいがるほど,子供はいい子になりますよ」だった.暖かい眼差しで子供を眺め共感しようと努めるならば,子供本来の良さが損なわれることなく成長する.

同じことをシュタイナーも言う.「成長しつつある子供の肉体を健全に育てようとするならば,健全な欲求や欲望に対して,喜びを求める心に対して,親切に応じようとする態度が必要である.喜び,楽しみは身体器官の健全な形態を最も正しい仕方で育てる力なのである.」

これ以上は無理というぐらい,子供はかわいがってやればいい.かわいがるというのは,子供と向き合い,子供に共感し,心を通わせるということでしょう.こずかいとして大金を渡すとか,何でも買い与えるとか,そういう低俗な行動とは違うわけです.もちろん,線引きが難しいこともあるでしょう.それは親として判断を下さなければ仕方ありません.でも,子供をかわいがることに恐怖する必要はないのです.自信を持って,かわいがってあげましょう.

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育児について書かれた,お勧めできる本

育児に関する知識を身に付けるための本

親だからできる赤ちゃんからのシュタイナー教育―子どもの魂の、夢見るような深みから

親だからできる赤ちゃんからのシュタイナー教育―子どもの魂の、夢見るような深みから

著者: ラヒマ ボールドウィン
出版: 学陽書房 (2000/11)
定価: ¥1,680
ISBN: 431366016X

原著は,シュタイナー教育を志す母親達にバイブルと言われる本です.子供が生まれてから小学校に行くようになるぐらいまでを対象に,シュタイナー教育の考え方と具体的なアドバイスを与えてくれます.シュタイナー教育の指導者の資格を持つ翻訳者の力によるところも大きいのでしょうが,とても優しく書かれていて,読みやすいです.

シュタイナーが正しいかどうかを評価するつもりはありませんし,仮に正しいとしても,すべての親がシュタイナー教育を志す必要があるとも言いません.でも,少なくとも,こういう考え方,こういう育児の方法があるのだということは知っておいて良いと思います.育児の全責任は最終的に親が負わなければならないわけですから,知りませんでしたで終わらせてしまうには,もったいないのではないかと思うのです.

是非,一度手にとって読んでみて下さい.

幸せな子ども―可愛がるほどいい子になる育て方

幸せな子ども―可愛がるほどいい子になる育て方

著者: 松井るり子
出版: 学陽書房 (1998/10)
定価: ¥1,470
ISBN: 4313660097

シュタイナー教育に魅せられ,母親としてシュタイナー幼稚園を体験した著者が,生まれてから小学校低学年頃までの育児について,自分の考えをまとめた本です.非常に優しい言葉遣いで書かれており,自分の意見やシュタイナーの意見を押し付けようとするのではなく,こういう育児もありますよと語りかけている雰囲気の本です.

育児の参考書として,またシュタイナー教育の入門書として,素晴らしい本だと思います.できれば,育児を始めるまでに読みたいですね.

七歳までは夢の中―親だからできる幼児期のシュタイナー教育

七歳までは夢の中―親だからできる幼児期のシュタイナー教育

著者: 松井るり子
出版: 学陽書房 (1994/07)
定価: ¥1,427
ISBN: 4313630279

米国に滞在した1年間,息子をシュタイナー幼稚園に通わせると共に,毎週1度の保育参加も経験した著者が,その幼稚園の様子を詳細に伝えてくれる本です.シュタイナー教育がどのようなものであるかを知りたい人には,非常に参考になるでしょう.大変読みやすく,押し付けがましくなく,幼稚園の様子,保育者の素晴らしさ,子供や大人の反応が素直に書かれていて,著者の感激がそのまま伝わってきます.シュタイナーなんて知らなくても,このような保育もあるのだと知るだけで大いに価値があります.育児に迷いがあるなら,是非とも読んで欲しい本です.

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